高原淳著『激訳・経営指針成文化』

 本書『ある日突然社長になった人のための激訳・経営指針成文化』は、成文化のプロセスを、単なるマニュアルを超えた「哲学」と「ストーリー」として描き出しています。
 経営指針とは、単年度の数字を追いかけるだけの計画書ではなく、中長期的な自社の成長と発展のために作成される自社の羅針盤です。しかし、何をどう考えればよいのかわからず、悩んでいる企業経営者が少なくありません。
 本書では、そこから一歩踏み込み、自社の社歴を年表化し、人類の歴史や業界の歴史まで遡って「自社は本当は何業なのか」を定義するプロセスを重視しています。例えば、弊社クナウパブリッシング(執筆当時の社名はソーゴー印刷)は、自らを単なる印刷業者ではなく、「価値ある情報を創造・発信・記録することによって豊かさと幸せの輪を広げる存在である」と再定義。この「情報創造業」としてのアイデンティティこそが、フリーマガジン『月刊しゅん』や雑誌『northernstyleスロウ』といった、地域に深く根ざしたコンテンツを生み出す技術的・思想的バックボーンとなっています。
 ビジョンの構築においても、著者の視点は独特です。現在の延長線上にある「中期ビジョン」だけでなく、自分がこの世を去った後の30年先を見据えた「超長期ビジョン」を描くことを提唱。そこには損得や打算が混じり込む隙間はなく、純粋な理想を追求できるからです。また、数値目標の立て方にも人間味が溢れています。通常の「売上積み上げ」ではなく、社員一人ひとりの人件費、つまり「幸せの原資」を起点に利益計画を算出する手法を提案しています。人件費を「削るべきコスト」ではなく、能力と人格の成長を願う「投資」と捉えるこの姿勢は、筆者の所属する中小企業家同友会が大切にする「労使見解」の精神、すなわち経営者と社員が対等な人間として信頼し合う関係性に貫かれています。
 本書の白眉は、成文化した指針を社内で共有するための「経営発表大会」のあり方です。著者はこれを、いかめしい顔で正論を述べる場ではなく、若手社員を主体とした「全員参加型のお祭りやショー」へと昇華させました。楽しみの中に価値ある情報を埋め込み、ストーリーとして伝えることで、社員の共感と主体的な行動を引き出すのです。これは、クナウパブリッシングが長年培ってきた「伝える技術」と「編集力」が、経営というフィールドにおいても遺憾なく発揮されている証左でもあります。
 自社の経営指針を成文化することは、逃れられない宿命を肯定的に解釈し直し、未来への一歩を踏み出すための聖なる儀式と言えるかもしれません。

書名:激訳・経営指針成文化(クナウこぞう文庫)」
著者:高原淳
仕様:文庫版 212頁
発行日:2017年6月15日
価格 : 748円(税込)

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 クナウパブリッシングの編集者と自費出版アドバイザーは、お客様の情熱や哲学を、一冊の「心揺さぶるストーリー」へと昇華させます。一冊の本を形にする道のりは決して平坦ではありませんが、私たちが長年培ってきた企画・取材・執筆・デザインの総合力で、全行程を伴走いたします。社員、顧客、地域社会へと、あなたのメッセージを最も深い形で届けるためのお手伝いをさせてください。